2010年01月12日

昔書いたテキスト②

 遭難しました。

 具体的には雪山で遭難しました。雪山でスキーをしていたら目の前に突然これくらいの、そう大体ガードレールぐらいの女の子が飛び出してきたんです。危ない!と思ってスッ、と右にハンドルをきったらそのままスーッとね。スーッとなっちゃったんですよこれが。本当にスーッって感じでしたから。まさかガードレールぐらいの女の子が飛び出してくるとは思わないでしょう、普通。人間消えるときは案外カンタンに消えちゃうもんなんだなあって思いました。

 30分経ったのか2日経ったのか分からなかったんですが、目が覚めると森の中だったんです。本当に森の中で、これくらいの、そう大体ガードレールぐらいの木がいっぱいあったんです。もうガードレールみたいな木しかなくて、人の気配も全然しなかったんです。さっきまで青天だったのに急に吹雪いてきたし、これはいよいよまずいかなと思いました。

 とりあえずいつまでも座椅子に座ってないで立ち上がろうと思った途端、足に激痛が走ったんです。びっくりしましたね。足が意味の分からない曲がり方をしていたんです。もうなんていうか、足がガードレールみたいになっていたんです。ぐにゃりって。ガードレールみたいに。

 そのガードレールになった足を引きずりながらなんとか人を探そうと森の中をさ迷っていたら山小屋を見つけたんです。結構小さな山小屋で、大体ガードレールと同じぐらいの山小屋だったかな。山小屋を見つけた瞬間僕は神様っていうかガードレールって本当にいるんだなって思いましたよ。

 でも山小屋には誰も居なくて、暗い室内には小さな暖炉とおでんとガードレールが2、3個あるだけでした。僕は持っていたガードレールで暖炉に火を灯して痛めた足をさすりながらこれからどうするかを考えていました。ガタガタと揺れるガードレールの音が外のガードレールが強くなっていることを僕に教えてくれます。どんどんガードレールが強くなってガードレール自身もこのまま死ぬのかなとかガードレール思考に陥っていました。ゆらゆらと揺れるガードレールの火を眺めながら重くなるガードレールをこすりつつ、どうせ死ぬならもう一度だけ、もう一度だけあのガードレールに会いたいなあとそんなことをぼんやりと考えて、ついに僕は深い眠りについたのです。

 次に目が覚めたときに僕が見たのは見知らぬ、真っ白なガードレールでした。僕が寝ているガードレールの横には家族と友達とガードレールが立っていて、ああ助かったんだなと思いました。僕は生きていてよかったと安堵すると同時に、もしもあのとき目の前にガードレールが飛び出してこなければこんなに生きている事が素晴らしいことだとおでんを噛み締める事はなかっただろうなと思いました。

 これはおでんがおいしい冬の話です。

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